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相続人の中に判断能力がない者と海外在住の者がいた事例

事 例

男性が亡くなり、その妻と、亡くなった男性の姉妹が相続人のケースです(依頼者は妻)。

問題は、相続人たる姉妹の一人は認知症で判断能力がなく、もう一人は海外に在住しているという点にありました。

遺産分割調停での解決

まず、判断能力のない相続人に対して、成年後見の申立てを行い、弁護士に成年後見人に就任してもらいました。

成年後見開始の申立ては、その対象者からみて4親等内の親族であれば申立てをすることが可能です。

本件においては、依頼者は、亡夫の妻であり、成年後見の対象者(亡男性の姉)からみると、2親等の親族ですので、申立てが可能です。

成年後見の申立てには、事実上、家庭裁判所所定の診断書の添付を要求されます。
本件においても、これを取得することが大変難しかったのですが、何とか病院を説得して、診断書等を発行してもらいました。

次に、海外在住の相続人(亡男性の妹)をどうするか、検討しました。
国際電話でお話したところ、この相続人は、もう海外住まいが長いので、日本にある遺産には興味がないということでした。
そこで、相続分譲渡(相続の権利を譲ってもらうこと)を考えたのですが、ここでまた、実際上の問題が生じます。

相続分譲渡を受けて、相続手続きから離脱してもらうには、その相続人の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となります。

基本的に、海外には印鑑証明という制度がありませんので、海外に住んでいる日本人にも印鑑証明書がありません。
この印鑑証明書に代わるものとして、その国にある日本大使館・領事館に出向いていただき、日本領事の面前で相続分譲渡の書面に署名をしてもらい、その署名が本人の署名であることの証明書を付けてもらう必要があります(これを署名証明書といいます)。

この海外在住の相続人(亡男性の妹)は、ご高齢であり、日本領事館がとても遠いことから、領事館へ出向くことはできないとのことでした。

弁護士としては、どうしたものかと悩んだのですが、「遺産はいらない」とおっしゃっていただいていたため、遺産を取得しないことの確認と依頼者(亡男性の妻)との関係で利益相反にならないことの確認を得たうえで、最終的には、この海外在住の方からも、弁護士へ委任状をいただき、申立人を2名として、遺産分割調停を申立てました(この意味については、「弁護士コメント」をご覧ください)。

結果として、もう一人の相続人の成年後見人となった弁護士と適正な内容((不動産は妻が取得し、成年被後見人たる姉に代償金を支払う内容)にて、遺産分割調停を成立させることができ、事案解決となっています。

弁護士コメント

本件は、その進行方法にとても悩んだ事例になります。

まず、相続人の一人についての成年後見の申立てについては、上記でも述べたとおり、対象者についての医師の診断書の取得の必要がありますが、実際上、身近にいる近親者からの依頼でないと、病院がその診断書発行に応じてくれないことがあります。

本件においては、依頼者は、被相続人の妻という立場であり、被相続人の姉とは、さほど近しい間柄ではありませんでした。
したがって、成年後見の申立権限はあるものの、診断書の取り付けには大変苦労しました。

次に、海外在住の相続人の取扱いも大変難しい問題です。
本件については、各種の確認を経た上で、その海外在住の相続人からも委任状をいただき、申立人を2名として、遺産分割調停を申立てました。

この意味は、二つあります。

一つは、裁判所からの書類の送達場所を弁護士事務所にすることができること、もう一つは、海外在住の相続人の署名証明書が不要となることです(弁護士へ委任しているため、遺産分割の内容として「遺産の取得は希望しない」という意思を弁護士から裁判所へ伝えることができ、そこには署名証明書の添付が必要ありません。)。

海外在住の相続人がいるケースで、本件のようなアクロバティックな解決方法を取ることができるケースは稀だとは思いますが、本件の解決も、弁護士が柔軟な発想で、解決方法を模索した結果と言えます(本件の方法も、弁護士が考えに考えた末にたどり着いた解決方法であり、これがうまく決まりました)。

遺産相続の問題は、対応する弁護士の知識と経験、そして創意工夫によって結果が異なることがあります。

相続・遺言問題でお困りの際には、是非ご相談ください。

(なお、本件は、あくまで実際の事例を改変してフィクションとしたものを「解決事例」としてご紹介するものです。)

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