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子へ長年にわたり多額の援助をした場合に特別受益が認められた事例

事 例

母が亡くなり、姉妹が相続人です(姉が当事務所の依頼者です)。

妹は、約25年にわたり定職に就かず、母は、妹の生活を支えるため、25年間毎月、家賃分7万円を送金し続けました。また、最後の10年間は、家賃分にプラスして生活費10万円を妹へ送金し続けました(総合計約3000万円)。

一方、姉は早期に独立しており、このような援助は受けていませんでした。

姉としては、このような多額の援助が相続で考慮されないのはおかしいとして、当事務所へ依頼をし、家庭裁判所へ遺産分割調停を申立てて、この多額の生活援助を特別受益と主張しました。

審判での解決

遺産分割調停手続において、妹側も弁護士を就け、妹はある時期から精神疾患により働けない状況であった、母からの送金は親の扶養義務の履行であり、特別受益に当たらない(特別受益に当たるとしても、持ち戻し免除の黙示の意思表示があった)、と主張しました。

これに対して、当方は、過去の妹の言動から働けなかったということは無い、母は半ば妹に脅迫されるようなかたちで不本意ながら送金していたということを主張しました。

また、亡くなる約6年前に、母から妹へ、「こちらの生活も苦しいので、もう送金は勘弁してほしい」という趣旨の記載のある手紙を証拠として提出し、主張を続けました。なお、それでも母は、亡くなるまで送金を続けていました。

この特別受益の主張が平行線となったため、調停は不成立となり、事案は、遺産分割審判手続へ移行しました。

最終的に、裁判官は、上記の手紙が書かれた以降の6年間の生活費相当額720万円(10万円×12か月×6年)のみを、成人した子への扶養義務の範囲を超えた生計の資本としての贈与として、特別受益と認定しています(その他の額は、特別受益とは認められない又は黙示の持ち戻しの免除があったと認定されています)。

弁護士コメント

本事例の審判をご紹介しましたが、これをお読みになられた方は、どのような感想をお持ちになられたでしょうか。

弁護士としては、やはり、毎月の長期の生活援助は、特別受益とは認定されにくいという印象を持っています。

本件においては、長期間の援助が総額では多額になるものの、家賃相当分の毎月7万円の部分は、裁判所は特別受益と認定してくれませんでした。

また、生活費相当額毎月10万円の部分も、明確に、被相続人が送金を渋っていた事情を示す手紙を起点にして、それ以降の送金額を特別受益と認定したに留まっています。

結論において不公平感は否めませんが、本件のような事例での特別受益の一つの判断としてご紹介させていただきます。
(コラム:相続Q&A【長期間に及ぶ子への援助が特別受益にあたるか】もご参照ください)

相続・遺言問題でお困りの場合には、是非、当事務所へご相談ください。

(なお、本件は、あくまで実際の事例を改変してフィクションとしたものを「解決事例」としてご紹介するものです。)
 
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