遺言書保管法に基づく自筆証書遺言の保管について(平成30年改正相続法シリーズ)

2020/02/06

平成30年相続法の改正では、新たに「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(「遺言書保管法」)が制定され、法務局における自筆証書遺言の保管制度が新設されました。

本コラムでは、遺言書保管法の制度についてご説明いたします。
なお、遺言書保管法は令和2年(2020年)7月10日から施行されます。

 

遺言書保管法の概要

遺言書保管法は、これまでいわれていた次のような自筆証書遺言のデメリットを軽減する趣旨で制定されました。

① 遺言書の真正(本人の意思により作成されたものか)の争いになりやすい、
② 形式不備のリスクがある、
③ 破棄されたり、紛失のリスクがある、
④ 検認手続きが必要

以上のような自筆証書遺言のデメリットを軽減するため、遺言書保管法に基づいて自筆証書遺言を法務局へ保管した場合には、①保管時には遺言者本人の確認が行われるため(法4条6項、法5条)、遺言書の真正が争いになりにくい、②保管時には実際上、自筆証書遺言の形式面の確認が遺言書保管官により行われるため(法1条、法4条1項)、形式不備のリスクが軽減される、③相続人等は、相続後に「遺言書情報証明書」を取得して登記等の手続きが可能なため、破棄や紛失のリスクが無くなる、④保管された遺言書については検認は不要とされているため(法9条、法11条)、検認の手続きが省ける、ということとなります。

また、この法律により保管されるのは、あくまで自筆証書遺言ですから、公正証書遺言と異なり、公証人費用がかからないという経済的メリットもあるものと考えられています。

 

保管申請をする法務局(遺言書保管所)

遺言書保管法4条において、遺言書の保管申請は次のいずれかの法務局(遺言書保管所)にするものとされています。

① 遺言者の住所地の法務局
② 遺言者の本籍地の法務局
③ 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局

ただし、④ 既に、遺言者の作成した他の遺言書が保管されている場合には、その他の遺言書が保管されている法務局に保管申請をしなければならないとされていることに注意が必要です。

 

相続が発生した後の手続方法

自筆証書遺言が保管されている方の相続が生じた場合に、相続人はどのように登記等の手続きを進めればよいのでしょうか。
この点については、関係相続人等は、遺言書が保管されている法務局に対して「遺言書情報証明書」の交付を求め、この「遺言書情報証明書」に基づいて登記等の各手続きを行い、遺言書に書かれている内容を実現していくこととなります。
この「遺言書情報証明書」には、その遺言書の画像情報が含まれていますので、これで遺言書の内容を確認することができるわけです。
なお、前述のとおり、この場合には検認手続きは不要となります。

 

その他の留意点

以上のように、自筆証書遺言の保管制度は、公証人費用がかからない自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことで、検認が不要となる等のメリットがある制度といえます。
留意点としては、相続開始後に、「遺言書情報証明書」の交付を受けた場合には、法務局から他の相続人等に対して、当該遺言書を保管している旨を通知するものとされていますので(法9条5項)、少なくとも相続が開始していることや遺言の存在について他の相続人の知るところとなります。

また、長文の遺言内容となる場合には、現実的には内容全文を自書することは難しい面があり、そのような場合には公正証書遺言を利用すべきでしょう。

 

施行日

前述のとおり、遺言書保管法は令和2年(2020年)7月10日から施行されます。


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