先行して行われた遺産の一部の分割が、残余の遺産の分割に影響を与えるか

2022/12/19

事例・質問


父(被相続人)が亡くなり、その相続人は、子2名です(兄と弟)。

父の遺産は、時価3000万円の不動産(自宅土地・建物)と預貯金2000万円でした。

兄は、父と生前に同居していた関係もあり、兄弟は、不動産について、先行して遺産分割協議書を作成して、不動産は、兄が相続することとしました。
なお、この遺産分割協議書には、不動産の分割内容が記載されているだけで、預貯金の取扱いや残余の遺産をどうするのか、については、何も触れられていません。

その後、兄弟で紛争となり、弟が家庭裁判所へ遺産分割調停を申立てました。

先行して行った一部の財産に対する遺産分割が、その余の財産の遺産分割にどのような影響を及ぼすでしょうか。

 

考えられる解釈


この点、残余の遺産である預貯金の分割内容として考えられるパターン(考え方)は、次の3つがあります。

(1)一部分割が残余の遺産の分割に影響を及ぼさない
   1000万円=兄 1000万円=弟

(2)一部分割が残余の遺産の分割に影響を及ぼすが、代償金の算定までには影響しない
   2000万円=弟  代償金なし

(3)一部分割が残余の遺産の分割に影響を及ぼし、代償金の算定まで影響する
   2000万円=弟  さらに兄は、弟に対し代償金500万円を支払う

上記の点については、先行して行った一部分割時の当事者の意思解釈の問題となり、必ずこうなるという答えはありませんが、先行して行われた遺産分割協議書に何も記載がなく、その他特段の事情がない場合には、先行して行った一部分割は、その余の残余財産(上記事例では預貯金)の分割に影響すると解釈されることが多いものと思います(上記でいうと(2)又は(3)の解釈になる場合が多いと考えられます)。

一部分割について参考になる審判例としては、東京家裁昭和47年11月15日審判があります。

 

東京家裁昭和47年11月15日審判(原文を抜粋)


残余財産の分割において、遺産全体の総合的配分の公平を実現するために、残余遺産についてのみ法定相続分に従つた分割で足りるか、一部分割における不均衡を残余遺産の分配において修正し、遺産全部について法定相続分に従う分割を行なうべきかが問題となるが、この点については一部分割の際の当事者の意思表示の解釈により定まり、共同相続人が一部分割の不均衡をそのままにし、すなわち一部分割における自己の法定相続分に不足する部分については各当事者が持分放棄あるいは譲渡の意思で一部分割を行なうときは、残余遺産につき前者の方法によることを承認したものとみられるが、このような特段の意思表示のないときは、残余遺産につき後者の方法によることを承認したものと推認すべきものと解される。
 

最後に


いずれにしても、先行して一部の遺産について遺産分割を行う場合には、後々の紛争を招かないために、先行する遺産分割協議書(調停の場合には調停調書/審判の場合には審判書)に、その余の残余の遺産の分割への影響を明示するべきと考えます。


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