相続後の貸金庫の開披・解約手続きについて

2023/06/06

今回の相続コラムは、生前に被相続人(亡くなった方のこと)が銀行等と貸金庫契約をしていた場合の問題点になります。なお、本コラムは、弁護士髙橋の経験等に基づく私見であり、各銀行等それぞれの対応も違うものと考えますので、実際の貸金庫の開披・解約手続きについては、必ず各銀行等へお問い合わせください。
 

銀行等との貸金庫契約とは

まず、被相続人が生前に銀行等と、貸金庫の契約を行っている場合があります。
この貸金庫の契約というのは、法律的にみると、銀行等と被相続人の貸金庫という空間(場所)の賃貸借契約となり、被相続人が亡くなって相続が生じると、この貸金庫契約の契約上の地位が相続人全員へ承継されることになります。

 

相続後の貸金庫の問題点

相続人としては、まず、貸金庫内に何が入っているか分からないことが多いものと思いますし、仮に何も入っていなかったとしても、貸金庫契約を解約しないと延々と貸金庫料を取られてしまうため、とにかく、開披して、解約手続きを取りたいところです。

しかし、多くの銀行等では、相続人の一人からの請求では、貸金庫契約の解約はおろか、中身の確認(開披手続き)にも応じてくれない場合が多く、相続人全員が同時に銀行等へ出向き、一緒に手続をしないと手続きが進まないことあります(少なからず、弁護士髙橋が知る限りでは、相続人全員(もしくはその代理人弁護士)が揃わないと貸金庫の開披・解約には銀行等は応じてくれません。)。

もちろん、相続人全員が円満に貸金庫の開披・解約手続きを行うことができれば、問題ないのですが、既に交渉が難航している相続事案や、相続人が多数いる場合には、全員での手続きは容易ではありません。

私(弁護士髙橋)も、過去何度も貸金庫の開披・解約手続きを行っていますが、基本的には、相続人全員とともに、銀行等に出向き開披・解約を行っています(全員の日程調整や事前に戸籍等の書類を提出する等、毎回、大変苦労します。)。

なお、相続人ご本人が代理人弁護士を就けている場合には、その方の代わりに弁護士が出向くことになります(ご本人が行かなくてもよいというのも、弁護士を就けるメリットですね。)。

 

貸金庫の開披等の方法

それでは、相続人の内で、貸金庫の開披・解約手続きに非協力的な者がいる場合には、どうすればよいのでしょうか。

これにはいくつかの方法が考えられます。

まず、貸金庫の中身の確認を行う方法としては、公証人の事実実験公正証書作成という方法があります。これは、公証人に依頼をして、銀行等へ出向いてもらい、貸金庫の内の内容物の確認をし、内容物のリストを公正証書にしてもらうという手続きになります。
(参照:日本公証人連合会ホームページ
ただし、この手続きでも、貸金庫の内容物の確認はできても、その内容物の搬出・取り出しや貸金庫契約の解約をすることはできません。

銀行等が公証人の事実実験公正証書の作成手続きの拒絶する場合には、裁判所の保全処分により相続財産の管理人を選任してもらい、その管理人に、貸金庫の開披・内容物の確認をしてもらうという方法があります。
ただし、この方法でも、内容物の搬出はできないものと考えられています。

その他の方法として、家庭裁判所の遺産分割審判において、「貸金庫契約の契約者たる地位」のみを一部分割の審判をしてもらい、審判を受けた者が単独で貸金庫の開披・解約を行うという方法が提唱されています。
なお、私は、まだこの方法で貸金庫の開披・解約手続きを行ったことはなく、本当に裁判所がこのような審判をしてくれるのか、確証はありません。

なお、私(弁護士髙橋)は、家事事件手続法284条の調停に代わる審判においては、次のような審判を得て、実際に単独で貸金庫の開披・解約を行ったことがありますので、調停に代わる審判の文例をお示しさせていただきます。

「被相続人名義の〇〇銀行〇〇支店の貸金庫契約について、申立人は、同契約上の地位を単独で承継するものとし、単独で貸金庫の開披及び解約並びに貸金庫内の物品の受取権限を有することを確認する。」

 

最後に

いずれにしましても、相続開始後の貸金庫の手続きは、非常に煩雑です。弁護士の視点からすれば、相続開始後に相続人間で紛争が起こりそうなのであれば、貸金庫契約は、被相続人が生前に解約する等しておいた方がよいように思います。

貸金庫問題を含めて、相続手続きでお困りの際には、是非、ご相談ください。


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