家業従事型の寄与分について

2023/07/18

相続において、亡くなった方(被相続人)の財産の維持又は増加に「特別の寄与」をした方がいる場合に、その方の「寄与分」(キヨブン)が認められるケースがあります。

寄与分が認められると、寄与分で認められた額が、その方の法定相続分にプラスされることになります。
分かりやすくいうと、「遺産がその額になったのは私のおかげなのだから、私が貢献した分は上乗せしてください」という制度です。

この寄与分が認められるケースを類型化すると、

① 家業に特別に従事した場合(家業従事型)
② 金銭等を亡くなった方へ出資した場合(金銭等出資型)
(コラム「金銭等出資型の寄与分について」)
③ 亡くなった方の療養看護に特別に努めた場合(療養看護型)
 (コラム「療養看護型の「寄与分」(キヨブン)の実例」)
④ 亡くなった方を長きにわたり特別に扶養した場合(扶養型)

などに分類されると言われています。

本コラムでは、寄与分の類型の中の「家業従事型」について解説したいと思います。
家業従事型の寄与分とは、特定の相続人が、被相続人の事業に関し、無償に近い形で長年従事した(だから、被相続人が亡くなったときに、これだけの遺産が残っているんだ)、という主張になります。

一般的に、家業従事型の寄与分の判断要素は、

(ⅰ)特別の貢献といえるか
(ⅱ)無償(に近い)か
(ⅲ)継続して長期間、家業に従事したか
(ⅳ)専従性があるか
(ⅴ)財産の維持又は増加につながったか

などを考慮して「特別の寄与」といえるかを判断していきます。

これらの考慮要素を一つずつ見ていきましょう。

(ⅰ)特別の貢献といえるか
これは、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超えることが必要になります。
配偶者の場合や、被相続人の持ち家で同居している場合は、ある程度家業への協力が期待される立場になりますので、「通常期待される程度」が高くなると考えられます。

(ⅱ)無償(に近い)か
世間並みの給与を受け取っている場合は、第三者を雇用した場合と差がないため、相続財産への貢献があったとはいえず、寄与分は認められにくい傾向にあります。
典型例は、ほとんど給与をもらわず(実家に同居して小遣い程度しかもらわない等)、その分、被相続人の財産が増加したというようなケースになります。
全くの無償である場合や、給付を受けていても世間並みの給与と比較して著しく少額である場合は、寄与分が肯定され得ることになります。

(ⅲ)継続期間
極めて短期間、家業に従事したというだけでは足りず、ある程度の長期間、継続して家業に従事したことが必要です(明確なルールはありませんが、最低でも数年程度の従事が必要と言われています)。

(ⅳ)専従性
労務内容が片手間なものではなく、かなりの負担を要することが必要です。
なお、ここでいう専従性とは、家業だけをやっていたという意味ではなく、他の業務に従事しているからと言って、この要件が直ちに否定されるものではありません。

(ⅴ)財産の維持又は増加につながったか
「被相続人」の財産への影響を判断するものですので、被相続人が代表者になっている会社への労務の提供は、原則として被相続人が給与支払を免れた、とは言い難いとされています。
例外的に、会社の実態は個人事業であって被相続人と経済的に極めて密接な関係があり、会社への援助が被相続人の資産の確保との間に明確な関連性があれば、認められる可能性があります。

以上のとおりの要素を考慮して、寄与分の有無・額を決定していくことになります。

相続問題において、寄与分の判断等が必要になった場合には、是非、当事務所へご相談ください。


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